IMESの技術


屋内のエリアごとに送信機を設置するだけでGNSS対応デバイスが位置情報を得られる

世界で唯一の画期的な技術

imes
準天頂衛星初号機「みちびき」の開発の過程で生まれたIMES(Indoor MEssaging System)は、屋内外のシームレス測位を可能にするシステムです。このページでは、ION 2010で世界に向けて発表されたプレゼンテーションと、発案に至る経緯、技術の概略、運用システムについてご紹介します。

「ION 2010」におけるIMESの発表

ION GNSS+は、世界最大の測位衛星技術の学術会議です。1年に一度、世界各地の会場で開催されるこのイベントは、測位衛星技術に関連した最新の製品やサービスだけでなく各国の制度や利用技術の成功事例の発表の場となっています。2010年に開催された会議では、IMESが発表され、全世界から大きく注目を集めました。

<日本語版発表プレゼンテーション>

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IMESの発案に至る経緯

IMES(Indoor MEssaging System)は、屋内外のシームレス測位を可能にするシステムで、準天頂衛星初号機「みちびき」を開発する過程で、JAXAが弊社と協力して発案した日本独自の技術です。準天頂衛星は、GPSの補完・補強を目的としますが、ビルや地下街などの屋内での位置測位を補うものではありません。IMESは、GPS/QZSS電波を受信できない屋内における地上補完システムとして、準天頂衛星システム ユーザインターフェース仕様書(IS-QZSS)にて提案されました。

IMESは、GPS/QZSS測位信号と同一のRF特性を持つ電波を利用し、相互運用性を確保しています。これは、ハードウェアレベルにおいては既存のGPS/QZSS受信機をそのまま使えることを意味しております。2007年11月に、米国GPSW(現GPSD)よりIMES専用のPRNコードとして173〜182を割り当ても受けております。

IMESの特徴

IMESは発案当初からメインターゲットを歩行者とし、スマートフォンを代表とする携帯電話への普及を考慮がされており、さまざまな工夫が組み込まれておりますが、大きな特徴として下記3点が挙げられます。

<測距しない>

ユーザに対して位置情報をメッセージとして直接伝達するので、送信機/受信機間の測距を行いません。

<微弱電波>

微弱電波の為、日本国電波法において免許を要しない無線局です。

<厳格な運用規程>

IMES送信機はJAXAにより運用管理規程が定義されています。

  • 測距しない

通常GPSでは、4台以上の送信機(GPS衛星)からの距離を計測することにより自己位置を知ります。当初日本国内では、屋内に擬似的な衛星(スードライト)を設置し、屋内位置測位を行う研究が進められていましたが、下記の問題により安定した位置計測を行うことができませんでした。

・屋内では壁・天井などの電波の反射が多くマルチパスや減衰の影響により、安定した測距が難しい

・各送信機間において高精度な時刻同期が必要なため、送信機コストが高くなる

・測位地点において複数の送信機からの受信が必要なため、多数の送信機が必要となる

IMESはこのような経験から、測距を行わず、送信機からそのまま位置情報をメッセージとして送信する方法を採用しました。シンプルな解決法ですがこれにより下記のようなメリットが得られます。

・送信機間の時刻同期が不要なので送信機のコストが抑えられる

・1台の送信機のみで位置の解決が行える

・測距を行わないので、マルチパスの影響が少ない

さらにIMESでは、メッセージの中に階数及びショートID、ミディアムIDと呼ばれるID情報を埋め込むことにより、屋内環境においてより有益な情報を提供することができます。

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  • 微弱電波

IMESは送信機端において、等価等方輻射電力(EIRP)が-94.35[dBW]以下とIS-QZSSで定義されています。これは送信機の3mの距離における電界強度が35μV/m以下となるため電波法第4条第1項に該当せず、IMESは「免許を要しない無線局」となります。ただしIMES送信機は、GPS・QZSSからの測位信号およびIMES送信機同士の干渉を防ぐため、また目的外の使用を防ぐためにJAXAが定める「地上補完システム(IMES)送信機利用約款 」を遵守する必要があります。

  • 厳格な運用規程

IMESは米国からPRNコードを割り当てられたという経緯もあり、開発当初から厳格な運用規定が検討・整備されてきました。これは、IMESからの信号は偽装されにくい位置精度が保証された情報であるとも言え、他の位置測位技術と異なる大きな特徴となります。

IMES送信機設置にはJAXAへの登録が必要となりますが、この時に希望すれば国土地理院の場所情報コードサーバに登録することができます。つまりIMESは電子基準点や三角点のような基準点体系を補完する屋内位置情報基盤として利用することが可能であることを意味しております。

IMESのRF特性

IMES信号は、GPS及びQZSSのL1C/Aに準じたRF特性を持ちます(以下、「IMES-L1C/A」)。IMES-L1C/AについてはIS-QZSSにて記載されており、そのRF特性は下記の様に定義されています。

  • 信号構造

<搬送波公称中心周波数>

IMES信号は後述のように、単独の中心周波数をもちBPSKで変調されます。搬送波公称中心周波数はL1帯の1575.42MHzからのオフセット方式をとっており1575.4282MHzです。このオフセットはIMES信号がGPS信号への干渉を防ぐための施策ですが、通常のGPS/QZS受信機においては信号のサーチ範囲内であるため影響はないと考えられます。中心周波数は公差として0.2ppmまで許容しています。

中心周波数: 1575.4282MHz

公差: 0.2ppm

<変調方式>

PRN コードと航法メッセージによるIMES-L1C/Aのビット列で搬送波が BPSK(1) 変調されます。PRN拡散周波数は搬送波公称中心周波数の154分の1で、周波数帯域はメインローブを含む2.046MHz以上と定義されます。

  • 信号強度

送信機端の等価等方輻射電力(EIRP)が、–94.35[dBW]以下と定義されていますが、GPS(高感度受信機)の干渉回避のため受信機端での最高信号強度を調整する必要があります。この値は受信端でGPS信号が受信可能か否かにより異なります。また受信端での最低信号強度はIS‐GPS‐200での定義値と同様に-158.5[dBW]となっています。

GPS受信電力の予測 信号強度
送信機 -94.35[dBW]以下
受信機 -158.5[dBW]以上 -158.5[dBW]以上 -140[dBW]以下
-158.5[dBW]未満 -158.5[dBW]以上 -150[dBW]以下

<PRNコード>
IS-GPS-200でのC/A 信号の PRN コードと同一のコード系列で、173〜182が「QZSS – IMES」として割り当てられています。

※上記のPRNコードは、日本国外での利用は認められておりません。

<航法メッセージ>

IMESの位置情報はIS-GPS-200で定義される航法メッセージとして放送されます。ビットレートは、高速ビットレート(250[bps])および、GPS 互換ビットレート(50[bps])とされています。

IMESの位置情報はIS-GPS-200で定義される航法メッセージとして放送されます。IMESメッセージ仕様についてはIS-QZSSにて記載されており、ここではメッセージ特性とメッセージ内容について記述します。

メッセージ特性

IMESのメッセージはフレーム単位で構成され、フレームは複数のワードで構成されます。ワードは30bitの固定長で、フレームの先頭ワードには8bitのプリアンブルが、以降のワードにはワード毎に1ずつインクリメントされる3ビットのワードカウンタが付与されます。

また、ワード末尾には6bitのパリティが付与されるため、1ワードに含まれるデータビットはフレームの先頭ワードで16bit、以降21bitとなります。

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<プリアンブルについて>
現在の仕様では、各フレームの先頭ワードに0x9Eのプリアンブルが付与されます。これはIMES識別用の固定値でGPS/QZSSの0x8Bと異なります。

<ワードカウンタについて>

ワードの先頭3bitはワードカウンタの値が付与されます。ただしプリアンブルが付与されるフレームの先頭ワードはワードカウントの値が組み込まれませんがインクリメントは行われます。また、ワードカウンタの値が0b100となる場合は、プリアンブルとの識別のためにスキップされ0b101の値となります。

<パリティについて>

各ワードの末尾は、6bitのパリティとなりこれによって各ワードの区切り識別を支援します。このパリティアルゴリズムは、IS-GPS-200と同様の(32,26)ハミング符号です。

メッセージ内容

<メッセージタイプ>

IMESのメッセージはフレーム単位で放送されます。フレームのIMESメッセージ内容はメッセージタイプとして定義されメッセージタイプIDで識別されます。このメッセージタイプIDは、フレーム先頭ワードのプリアンブルに続く3bitで指定されます。

メッセージタイプ1とメッセージタイプ2は緯度経度などの絶対位置座標を含みます。各送信機はメッセージタイプ1とメッセージタイプ2いずれかのメッセージを放送する必要があります。メッセージタイプ3とメッセージタイプ4は座標情報以外の位置情報のIDを放送しその内容は別途データベース上で定義されます。

<IMES L1C/A メッセージタイプID定義>

MID(メッセージタイプID) ワード数 メッセージ内容
0 (=0b000) 3 位置情報1(緯度、経度、階数)
1 (=0b001) 4 位置情報2(緯度、経度、階数、高度、精度指標)
2 (=0b010) ※予約
3 (=0b011) 1 ショートID
4 (=0b100) 2 ミディアムID
5 (=0b101) ※予約
6 (=0b110) ※予約
7 (=0b111) ※予約

<メッセージタイプ0>

3ワードで構成され、緯度、経度、階数の位置情報を含みます。この位置情報は受信側の利用想定領域での座標でIMES送信機自身の位置情報とは異なる場合もあります。構造および各データ項目のLSB(スケールファクタ)やレンジは下記のようになります。

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<メッセージタイプ1>
4ワードで構成され、緯度、経度、階数、高度、精度指標を含みます。この位置情報は受信側の利用想定領域での座標でIMES送信機自身の位置情報とは異なる場合もあります。メッセージタイプ0のスケールファクタは/2^22ですが、メッセージタイプ1は/2^23なのでより細かい位置座標の指定が可能となります。ワード長はメッセージタイプ0より1ワード多いため、計算上メッセージの読み取り時間(TTRM)は増加します。構造および各データ項目のLSB(スケールファクタ)やレンジは下記のようになります。
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<メッセージタイプ3>

1ワードで構成され、ショートIDと境界検出フラグを含みます。
ショートIDは12bitでその内容はユーザが自由に定義できます。ただし、0x0FE0(=0b111111100000)〜0x0FFF(=0b111111111111)は安心安全のための利用方法が検討されている予約値であり、一般用途では使用してはいけません。
境界検出フラグはBDビットと呼ばれ、このフラグが”1″の時、GPS 信号と IMES 信号が混在する受信環境であることを意味します。これは、受信機のサーチアルゴリズムにおいて的確なIMESとGPSのチャンネル割り当てを支援することを目的としています。

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<メッセージタイプ4>
2ワードで構成され、ミディアムIDと境界検出フラグを含みます。
ミディアムIDは33bitでその内容はユーザが自由に定義できます。
境界検出フラグはBDビットと呼ばれ、このフラグが”1″の時、GPS 信号と IMES 信号が混在する受信環境であることを意味します。これは、受信機のサーチアルゴリズムにおいて的確なIMESとGPSのチャンネル割り当てを支援することを目的としています。

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ユーザーインターフェース仕様

IMESのユーザーインターフェース仕様は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公開している「準天頂衛星システム ユーザーインターフェース仕様書(IS-QZSS)」内付録の「地上補完システム(IMES)」で制定されています。

2015年4月現在、最新のIS-QZSSは2014年11月28日制定の IS-QZSS Ver1.6となります

この文章の有効期限は下記のように定義されています。

「この文書の内容は、2016 年 9 月以降に予定されている、準天頂衛星システムサ
ービス株式会社が整備する QZSS 地上システムが完成し、当該システムで「みち
びき」の運用が開始されるまで有効である。新地上システムによる「みちびき」の運
用開始後は、準天頂衛星システムサービス パフォーマンススタンダード及びユー
ザーインタフェース仕様書に基づく信号・サービスが提供される。」

IMESの運用システム

IMESの普及に向けて、設置、管理性を高めるために、IMES設置登録システムが開発され、IMESの実証実験で運用されています。

<IMES設置登録システムプレゼンテーション>

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