電波干渉とジャミング対策技術


電波干渉とジャミング

地上から約2万キロ以上の上空を巡回する衛星から放送されているGNSS信号は、-130dB程度の微弱信号ですので、他の電波通信と比較して、GNSS受信機やアンテナは、帯域外、帯域内の他の電波信号からの電波 干渉の影響を受けやすいという特徴があります。そして、近年、問題になってきているのが、隣接帯域の電波のスプリアスによる電波干渉とジャミングです。

帯域内に特定の信号を送信して電波干渉を生じさせて受信妨害を行うジャミングです。携帯電話や探偵追跡 用のGPSデバイスなどや、トラック、タクシーなどの運行管理システムのGPS機能を妨害するために、安価な GPSジャマーが市場に出回ってきているのがその理由です。その多くは帯域内に、固定の周波数で強力な信 号を送信する単純な電波送信機ですが、中には、信号の周波数を定期的に変化させるチャープジャマーと呼 ばれる電波送信機もあります。また、稀なケースですが、電子機器から帯域内で電波ノイズが発生していてジ ャミングと同じ状況を招いている場合もあります。

隣接帯域の電波のスプリアスによる電波干渉は、LTEなどの携帯通信の基地局が原因となり問題となってき ています。電波のスプリアスには、帯域の整数倍の周波数を持つ高調波スプリアスと、電波を送信する機器の CPUクロックやD/Aクロック、電源スイッチングパルスなどのノイズによる非高調波スプリアスがありますが、ここで問題となっているのは、非高調波スプリアスです。ここで、問題を複雑にしているのは、帯域外の電波によ る電波干渉を受けた場合、その原因となる機器や、アンテナの方向にある衛星からの信号にのみ影響を与え ることが多いため、測位はできていても精度が下がっている状況を確認することが難しいという点です。

これらの電波干渉やジャミングへの対策は、高精度測位が可能な一部のメーカーのGNSS受信機にのみ搭載 されており、対策を行った受信機と対策を行っていない受信機を、同一環境に設置して測位を行うことで比較 しないと、問題が発生していることが確認できない場合がほとんどです。

アナログフィルタによる対策

電波干渉やジャミングの対策には、さまざまな手法があります。これらは、共通してフィルタが利用されていま す。フィルタとは、ある一定の周波数帯域の信号を阻止したり通過させたりする技術です。一般に、低域のみ を通過させるローパスフィルタや、高域のみを通過させるハイパスフィルタ 、一定の帯域のみを 通過させるバンドパスフィルタ、一定の帯域のみを阻止するバンドリジェクションフィルタがありま す。そして、実装方法を大きく分けると、アナログフィルタとデジタルフィルタ、その他の技術があります。そ れではまず、GNSS受信機やアンテナに利用されているアナログフィルタについて紹介をします。

アナログフィルタは、抵抗器とコンデンサ(キャパシタ)を組み合わせた回路により構成されています。そして、 コンデンサの素材により、いくつかの種類があります。SAWフィルタは、高周波広帯域のバントドパスフィルタを 実現する圧電効果を持つ素材が利用されています。SAWフィルタが市場に登場する以前は、高周波でダウンコンバータを介さずに広帯域のフィルタを実現することが不可能でした。したがって、とりわけ携帯電話などの 高周波を使用したデバイスでは、RF回路の部品点数が多くなり小型化やコストダウンが困難でしたが、 この方式の登場で一気に小型化と省コスト化が可能になりました。GNSS受信機については、ジャバッドがいち早く採用しています。

SAWフィルタが登場する以前に、高周波においてフィルタを実現するために多く利用されていたのは、セラミックフィル タです。SAWフィルタは、高周波における広帯域のフィルタにの、利用可能ですが、セラミックフィルタなら一旦、ダ ウンコンバートしておけば、帯域幅を自由に設定したバンドパスフィルタが実現可能です。GNSS受信機につい ては、ジャバッドが採用しています。ジャバッドのJ-Shieldはアンテナオプションです。ダウンコンバート前に SAWフィルタを使い、ダウンコンバート後にセラミックフィルタを利用してきめの細かいフィルタリングを行った上で、ア ップコンバータで信号を出力する仕組みになっています。この方式は、ジャバッドが特許を取得している独自の 技術です。

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デジタルフィルタによる対策

高精度GNSS受信機内部にはダウンコンバータと、A/D変換、デジタル信号処理を行うフロントエンド回路が搭載されています。A/D変換後にデジタル信号処理部において、入力データに対して数学的な処理を行うのがデジタル フィルタです。デジタルフィルタのGNSS受信機への実装例として、FIRフィルタとCICフィルタがあります。

FIR(Finite Impulse Response)フィルタは、日本語では、「有限インパルス応答フィルタ」と呼ばれています。ブロックダイアグラムでは3つのタップが使われていますが、より多くのタップ数で処理を行うこと で応答特性を高めることで、求められる周波数特性のフィルタ処理を行えるようになります。もちろ ん、タップ数を増やせば、より大きなCPUのパワーや、メモリ容量が必要となり、回路の小型化や 省コスト化、省電力化が難しくなります。さまざまな周波数特性のフィルタを実現可能ですが、一 例として、図のようなバンドリジェクションフィルタが構築可能です。GNSS受信機の実装例として は、ジャバッドDELTA-3Nのアンチジャミングがあります。

CIC(Cascaded Integrator-Comb )フィルタは、積分器をカスケードしたものと微分器をカスケードしたものをデシメータで接続したものです。FIRフィルタ同様、より多くのタップ数で処理を行うことで 応答特性を高めることにより、求められる周波数特性のフィルタ処理を行えるようになります。タップ数 と回路の小型化や省コスト化、省電力化の関係は、FIRフィルタと同様です。一例として、図のよう なバンドパスが構築可能です。GNSS受信機の実装例としては、ジャバッドDELTA-3N の帯域外干渉防止フィルタがあります。ジャバッドはこれにより、近隣にLTEなど携帯基地局が あっても優れた受信性能を実現しています。


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その他の技術

空洞共振フィルタは、高周波の特定の周波数帯域において共振する空洞に電波を通過させることにより特 定の周波数帯域の電波を阻止、通過させることが可能です。空洞共振フィルタの特性の一例と して、図のようなバンドリジェクションフィルタがあります。弊社のバンドリジェクションフィルタには 、空洞共振フィルタの技術が利用されています。

アダプティブフィルタは、その時々により絶えず変化するノイズ成分のみをカットさせるため、入力 信号に応じたフィルタ係数を変化させるフィルタです。スイッチングなどを行わせることでアナログ回路で実装す ることも可能ですし、デジタル回路により、特定の電波強度の高い帯域に対して自動的にフィルタを かける方法もあります。ともにさまざまなアルゴリズムが存在しますが、GNSS受信機の場合、セプテントリオの製品において、ジャミング対策のために、狭帯域のバンドリジェクションフィルタであるノッチフ ィルタとの組み合わせで実装されています。入力信号により自動的に阻止域が移動するので、 チャープジャマーに対して絶大な効果があります。

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