GNSSの座標系

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GNSS受信機から出力される位置情報は、WGS84という測地系に基づいています。このWGS84による出力結果は、例として「Lat. 35°39.900 N Lon. 139°44.483 E(北緯39度39.900分、東経139度44.483分」というように地図で馴染みのある緯度、経度であらわすことができます。しかし、実際には単にWGS84だからと言ってすべてが同一の座標となるわけではありません。また、地図上で同一の緯度、経度で表現されている座標も、地図ごとに異なる測地系を使用していることが原因で、必ずしもすべてが同一の緯度、経度で同じ位置となっているわけではありません。それでは、まずWGS84が、どのような座標系なのかを説明したのちに、その変遷や衛星システムとの関係を説明します。

WGS84、別名、「世界測地系1984」は、アメリカ国防省が1960年に策定したWGSが、1984年に大きく改定された一連の測地系の総称です。地球の形状のモデルに回転楕円体(Ellipsoid of Revolution)を定義し、地球上のいずれの地点でも高さの基準として平均海水面高度のモデルであるジオイド(Geoid)を定義した、地球中心・地球固定(ECEF: Earth-Centered, Earth-Fixed)の直交座標系です。

直交座標系とは、x、y、zの3次元の空間内でお互いに交わる3本の軸で座標を表現することで、原点は地球の重心です。WGS84は、z軸を自転軸として、x軸をグリニッジ子午線としているCTRS(Conventional Terrestrial Reference System:慣用地球基準系)です。そして、地球の形状を、自転軸を中心に回転する楕円体で定義した上で、楕円体の表面と海水面の間の高さをジオイド高で表現しています。

これとは別に、z軸を自転軸と平行としてx軸を赤道面内で春分点としているCIRS(Conventional Inertial Reference System:慣用慣性基準系)があります。CTRSは、地球上の多数の地点の座標軸で表現されますが、CIRSは恒星の位置とそれぞれの動きをVLBIなどで観測することで表現されます。地球基準系と慣性基準系は計算によりお互いに変換が可能です。GNSS衛星の軌道にとっては、CIRSが重要となります。

GPS衛星では、1987年にドップラー衛星測量によりWGS84が定義され、GPSのエフェメリス(軌道)情報の放送に使用する基準系となりました。以後、3度にわたりWGS84は更新されています。まず、1994年1月2日(GPS Week 730)には、GPS測量により精度が向上されWGS84(G730)となりました。そして、1996年9月30日(GPS Week 873)には、IERS(International Earth Rotation Service)のITRF(Terrestrial Reference Frame)97により近づける形で定義され、1997年2月29日から軌道情報の放送に反映されました。そして現在では、ITRF2000に基づいて2002年1月20日からWGS84(G1150)に改定されて現在に至ります。この点は、とりわけ後処理解析をする上で重要となります。

さて、次にGPSとITRFの関係について説明します。GPS衛星の軌道は、IGS(International GPS Service for Geodynamics)の全世界のGNSS受信機のネットワークで収集した観測データに基づいて計算されています。収集したデータからGPS衛星の軌道を計算するためには、それぞれのGNSS受信機の座標の精度など、さまざまな要因を考慮する必要があります。地球の表面はプレート運動などによる地殻変動で常に動いています。IGSのサイトは、地殻変動の観測で重要となる場所に設置されています。

IERSでは特定の日付におけるIGSのサイトの位置を定期的に計算しています。そしてそのサイトの位置情報によりITRFが定義されています。また、サイトの位置情報の将来予測もおこなっています。ITRFは国際標準であり現在、精度がもっとも高い測地系です。サイトの運用期間が長ければ長いほど、より高精度で位置と速度を求めることが可能で、より精度な軌道情報が得られるようになります。

さて、ここでGPSとSBASは、共にITRF2000に基づいているものの、そのアプローチは異なっている点についても触れておきましょう。GPSは、2002年1月のエポックから座標を固定しています。しかしながら、WAAS、EGNOS、MSASなどのSBASでは、地上局の位置情報を、ほぼ1年周期で定期的に改訂しています。また、同時に数か月後の速度を翌年の中旬に向けて予測しています。

また、GNSS受信機を自動モードにしている場合、座標の出力データは、WGS(G1150)で出力されます。さらに、相対測位においては、補正情報サービスにより動作は異なります。SBASでは、現時点のエポックのITRF2000で出力されます。トリンブル社のOmniSTARでは、現時点のエポックのITRF2005で出力されます。独自に基準局を設置する場合、RTKの場合も後処理キネマティックの場合も、基準局に設定された測地系で出力されます。国土地理院の電子基準点の場合もこれにあたります。